中期政策(後半)
中期政策(後半)案
1.職場の課題解決や創意工夫を具現化する力を持ち、私たちの職場と雇用を守る。
定期的な労使協議において、職場の課題を解決する改善提案を提起し、労使で実行、検証するサイクルの確立を目指します。ムリ・ムダ・ムラの排除とIT技術の活用をもって飛躍的な生産性の向上と働きやすさの両立を労使で追求することで、お客さまの求める商品・サービスの実現に近づけることを労使共通の目標とし、生産性の向上を目指します。
新型コロナの影響によって、それ以前から潜在的にあった産業構造の脆弱性によるビジネスモデルの限界が露呈し、今までと同じビジネスの継続が困難な企業も出てきています。新しい事業や取り組みに果敢にチャレンジすることや、時には会社を超えた柔軟な異動配置を実行することも含めて、あらゆる取り組みを労働組合としても後押しし、グループの総力をもって雇用を守ります。
これらを推進するにあたり、単組の現状分析を実施した上で、課題解決力の向上に向けて労連事務局・サポートチームの仲間の支援、教育活動の展開を行います。
私たちはこの難局を労使の総力を結集して乗り切り、次の成長ステージを目指します。
(重点実施・検討項目)
- 課題解決セミナーの展開
- 課題解決マニュアル作り(問題発見→状況確認→課題の特定と対策の検討→労使協議→改善策の実行と検証)
- 労使協議会の状況確認とノウハウの共有の機会
- 流通・IT等、企業の成長に必要な先進的取り組みの視察
2.新しいグループ労使関係を基軸に、「働きたいイオン」を実現する
私たちは国内で最も多くのパートタイマーを抱える企業集団であり、その人材活用のあり方はこれまでも流通・サービス業界の先鞭をつけると同時にロールモデルとなってきました。2019年に施行された改正有期・パート法により、同一労働同一賃金の重要性と必要性は高まっています。私たちは「正社員・新卒採用・終身雇用第一主義」に捉われることなく、誰もが働きやすく、働き続けられる、業界で一番魅力ある労働条件と労働環境の実現に労使で取り組まなくてはなりません。
検討をスタートした「新しいグループ関係」において、労働条件面についてはパートタイマーの処遇改善・同一労働同一賃金の実現をはじめとするグループ全体の労働条件の方向性や、グループミニマム基準・目標水準の提示を行うことで、個社の労使協議のリードとサポートを行いたいと考えます。通年協議による課題解決と労働条件改善により、業界・地域においてそれぞれの個社が最も働きたい企業となることを目指します。
また、グループ労使でこれまで取り組んできた共通福祉制度や社会貢献活動についても、次の10年に向けた再検討を行います。具体的には関心と関与の拡大を重点的な指標として取り組むことで、社内外へのアピールを高め、各社とグループの福利厚生の向上とCSRの推進につなげます。
この他、これまでも取り組んできたダイバーシティの施策についても改善を進めるべく、働きやすい職場環境の整備に取り組みます。
これまで以上に労使が連携・協業することで、確実な成果を生み出し、イオンのブランディング向上によるイオンピープルの幸せ実現につなげます。
(重点実施・検討項目)
- 「新しいグループ労使関係」の発足と実行領域の特定。領域別の方向性と目標設定
- グループ台のミニマム労働条件と目指す水準の設定と各社労使協議のフォロー
- 会社の社会貢献活動の再構築と労使の協同・連携の強化
- グループ共通福祉の認知度・活用度向上に向けた施策の実施
3.イオングループを代表する組織として、グループ台の共通課題を協議・解決する労使関係へ
イオン労連は加盟単組を代表する、グループの組合代表組織です。加盟単組数は45単組、組合員数はこの10年で約10万人増加し、28万人を超える大組織となりました。これまで労連とイオンHDsは特に社会貢献分野や公民権行使の分野では共同取り組みを推進してきましたが、それ以外については協議する機能は弱く、必要に応じた対応に留まってきました。
検討している「新しいグループ労使関係」についてはグループ労使のあるべき方向性をしっかりと描き、各社労使をリードする労連・HDsの関係を目指しています。
労連はグループ全ての従業員代表たるべく、構成組合員数はもとより、構成組織数においても過半数を超えることが望ましく、単組はより多くの組合員の意見を改善に反映させていくため、また組織防衛の観点からも構成組合員数において絶対多数(75%以上)を担保する必要があります。国内未組織企業の組織化、絶対多数未達単組の組合員化の推進を計画的に、労連の総力を挙げて取り組みます。
友好労組の労連加盟についても引き続きアプローチしていきます。
事業別労使懇談会についてはHDsが事業別責任者体制を解消する方向のため、全体としては計画しませんが、必要に応じて実施します。
(重点実施・検討項目)
- 組織率50%未満単組の組合員化完了
- 新結成組合の選定と結成フォロー
- 組合結成・組合運営マニュアル作成
4.上部団体への戦略的人材派遣と政策推進活動の進化
私たちは上部団体に人材を派遣したり、活動に参画することで労働運動や産業の発展に寄与すると同時に、イオン労連のビジョン実現に向けた取り組みを上部団体や業界内においても展開したいと考えています。こうしたことをより効果的に実施していくためには「政策」、すなわち具体的にどの分野・領域の何を推し進めたいのかを誰にもわかるように表現することで共通目標・共通取り組みとすること、その実現に効果的なポイントに人や活動といった資源を集中することが重要です。
まずはイオン労連で目指す具体的な「政策」を策定し、人材派遣や組織体制、活動内容がその実現に向かうようにロードマップを描きます。
地域課題の解決の重要なファクターであるパートナー議員等は、全国津々浦々に展開するイオングループであることを考えると、全ての地域を網羅していることが望ましいですが、現実的ではありません。まずは都道府県単位でのパートナー議員(準じる人含む)の配置を目指し、政策実現と課題解決の両立を行います。
「労働運動」と「政治へのアプローチ」の両輪でビジョン・政策の実現を目指します。
(重点実施・検討項目)
- 「イオン労連の政策」の策定
- UAゼンセン組織内議員・準組織内議員を含めた全都道府県を網羅するパートナー議員網の構築
- 田村まみ・かわいたかのり参議院議員を通じた法改正による流通・サービス産業政策の推進
- 上部団体派遣体制の再構築。地域バランス、労連での役割との連動
- 政策推進活動のスキームづくり
5.全員参画の地域活動と社会貢献へ
労連の仲間が地域単位で集う機会を創出したエリア活動を、第3次新労連ビジョンでは「組合員のいる地域に活動の軸をシフトする」ことを目指して取り組んできました。活動領域が定まり、役員と参加者が拡大しつつあった矢先に新型コロナウイルスの感染拡大によって水を差された形となりましたが、広域多事業所の企業・単組の増加により、労連に集う各単組の全組合員が何らかの組合活動に参画できるようにするためには、地域活動のさらなる展開が必要です。私たちはコロナの制約の中であってもさらなる関与者の拡大に向けて検討を進めていきます。
また、事業活動・社会貢献活動については「地域の課題解決」や「地域との共生」といった視点を強くもって進めることで、単発ではなく継続的に取り組むことを念頭におきます。
2011年の東日本大震災の翌年から労使で「イオン心をつなぐプロジェクト」をスタート、植樹活動・災害ボランティア派遣・グループ企業の支援活動を10年間実施してきました。グループ企業の支援活動は地域の課題解決を支援する「未来共創プログラム」も派生し、これらの活動には多くの企業労使と従業員の参画を頂きました。また、イオン社会福祉基金は労使で拠出した基金で障がい者福祉活動を40年近く続けてきました。
多くの企業と従業員が参画して取り組んできた労使の社会貢献活動ですが、広域多事業所企業においては参画が難しく、GMS・SM企業に偏りがあることも事実です。
「イオン心をつなぐプロジェクト」が10年の節目で終了を迎えることにあわせ、次の10年の取り組みを検討・スタートします。現在の課題を整理し、1人でも多くの従業員が参画出来、地域社会の活性化に貢献できるスキームを作って進めていきます。
社会貢献活動や地域活動で触れることの出来る、非日常の体験は「人間力」を高めるきっかけになる要素を多分に秘めています。また、活動の企画・運営を実施することはマネジメント力の向上にも寄与します。これらに参画する人を意識的に増やすことでリーダー育成につなげていきます。
このように地域活動の重要性と活動量が高まっていくことを踏まえ、地域執行体制の具体的検討も行い、2025年までのスタートを目指します。
(重点実施・検討項目)
- 地域活動の継続的拡大。地域に住むイオンピープルが集い、考え、力を合わせる活動へ。
- 「イオン心をつなぐプロジェクト」のクロージングと次の10年の活動の策定・スタート
- 労使で取り組む社会貢献活動の全体的な再整理と再始動。
- 地域執行体制の検討
6.ガバナンス強化とITツールの活用で強い組織づくり
第31期に策定した「ユニオンガバナンス」により、監査体制や規約・規定の整備など一定のレベルアップが実現しました。しかし金銭面の不祥事やハラスメントは散発しており、コンプライアンスとガバナンス面でのマネジメント強化が必要です。
第37期よりスタートした労連版目標達成運動とあわせ、何を・どこまで・どのように実施すべきなのかを項目ごとにまとめた新加盟組合でもわかるマニュアルを整備し、単組のレベルを定期的にチェックしながら引き上げていきます。
IT技術・ツールはコロナ禍において飛躍的な進展を遂げ、導入コストや使いやすさのハードルも下がりつつあります。人と人が会うことが組合の活動の基本であることは変わりませんが、IT技術を導入することで意思疎通や実務処理のスピードは格段に上がります。積極的に導入することで組合本来の活動に費やす時間の創出につなげます。労連での先行投資・テスト運用や各単組が使用しているツールの共有をすることで、単組への展開を強化します。
(重点実施・検討項目)
- コンプライアンス・ガバナンス面での強化・整備項目の洗い出しとマニュアル作成、単組のレベルチェック、教育
- 会計伝票の電子化、書類のペーパーレス化
- 会議の資料・運営方法の見直し
7.海外活動
海外展開の拡大にあわせ、労連でも国際局を設置し、海外出向者の労働条件向上と現地従業員の労働条件・労働環境向上に向けた取り組みを実施してきました。各国のGMS企業においては企業内労働組合も結成し、協調的労使関係のロールモデルにもなっています。また、グローバル枠組み協定関連ではサプライチェーンに関する事件・事故の情報の早期取集なども出来るようになりました。新型コロナの影響でこれらの活動も大きな制約がかかったものの、リモートを活用して指導・コミュニケーションの機会は増加させることでこれをカバーすることが出来ています。
取り組む内容はこれまでと同様とし、アプローチ方法等についてはその時々の状況を踏まえて単年度の取り組みに柔軟に反映します。
(1) 海外出向者が安心して働くことができる為の支援
- 労連と加盟単組が連携し、労働・生活環境の改善に向けた取り組みの実施と、各国・地域で組合活動ができる組織体制・活動を構築します。
- どの国でも安心して働くことができるために、海外出向者とのネットワークを通じて集約された、各国の労働条件や労働環境を含む課題を改善します。
(2) 海外での事業展開における課題の解決
- グローバル枠組み協定の取り組み方針に沿って、イオン(株)、UAゼンセン、UNIなどの関係者と問題解決のための検討を経て、問題対応の仕組みを構築します。
- 海外で事業展開していく上での経営課題に対し、イオン(株)との情報交換を通じて、労使の関係性を深め課題解決に取り組みます。
(3) 各国で働く従業員の主体的な経営参画活動の支援
- 各国で働く従業員が、主体的に「自分たちで職場を善くする」という経営参画意識を醸成し、経営幹部と従業員が協働し、会社の健全な成長発展を実現します。
(4) 各国のグループ会社での労働組合結成とサポート
- 従業員の総意で結成される労働組合が、民主的な労働運動のもと、協調的労使関係が構築できるようにサポートを行います。また、理念実現にむけて中長期的に連携し合える関係を構築します。
- イオングループ企業で組織化された労働組合をグローバルネットワークユニオンと位置付け、組織化への支援や自立へ向けた活動のサポートを実施します。
- 従業員の主体的な経営参画を基盤に、健全な協調的労使関係が持てる労働組合設立のサポートを行います。
(5) 各国の労働組合の発展への貢献
- イオンの協調的労使関係がロールモデルになり、各国の産別労働組合などの組織と連携し、民主的労働運動の浸透を目指します。
(6) 各国での問題解決に必要な関係諸団体・有識者との関係構築
- UAゼンセン・UNI-Aproをはじめとする組織や、労働組合問題に精通している有識者と連携し、各国のリスクとなる労働問題や労働組合問題について取り組みを進めます。
8.人間力を高める機会、労連DNA継承の機会を毎年創出し、次世代のリーダーを育成する。
第3次新労連ビジョンにおいて重要な要素として「人間力の向上」を掲げましたが、この定義については曖昧なままとしたため、具体的な活動の推進には至りませんでした。
「人間力」の構成要素を明確に定義しようとすると論議が尽きることがありませんが、「人間力の向上」によってもたらしたい効果については、「労連・単組のトップにふさわしいリーダーの資質を備える」ということであり、そのためには過去の労働運動の歴史を学び、イオングループと労働運動の行く末を展望し、強い組織となるようにマネジメント出来るということではないかと考えます。
これらを体感し、語り合い、体内化して自らの言葉と行動で将来へのアプローチを具現化出来る人材の育成に向けた機会を定期的に創出します。
(重点実施・検討項目)
- 労連の労働運動の歴史を学ぶ機会(元会長の講話、過去の取り組みの学習など)
- 最先端の技術や知識、地域社会の現状(過疎化・農林水産業など)を学ぶ機会
- 自己理解を促進するセミナー
9.6つの挑戦を支えるもの
広報活動は「広報ゆうわ電子版」の毎月発信とHPの随時更新は実施できるようになりました。
DXの時代において、コミュニケーションを促進するツールが新たに数多く生まれています。どの対象にどんな情報を発信・共有・集約していくのかを、労連活動の行く末も鑑みながら再検討し、次世代の広報活動にシフトします。
第3次労連ビジョンも後半に入り、この数年で次のビジョンの検討をスタートしていきます。イオン労連の規模は今後もますます拡大していく予定であり、活動量も飛躍的に増大していくでしょう。こうした活動を支える組織体制・財政(特に会費収入のあり方と支出項目のバランス)等も同時に検討を行い、新ビジョンとともに提案します。